MELMO

いのちの声 こころの詩

絵の国

私は今壊れてゆきます
昔見た狂気の絵の具で虹を描きます
小鳥がナイフを掴んで飛びながら
綺麗な唄を歌います
飛んでくる小鳥を刃ごと素手で捕まえます
窓から炎は巨大な花が揺れるように
燃え上がります
吹き出る炎に真っ赤な手を
差し出し暖めましょう

天使は矢を放ち魂を抜き去ってゆきます
何か哀しいことがあったのでしょうか?
涙はスーッと流れます

この国は笑いながら
泣きながら消えてゆきます
消えて消えて消えたらまた
抜け殻はお出かけです
壊れてゆく壊れてゆく懐かしくも哀しい世界

今日も食べる毒林檎で
いい夢が逃げ出すほど深い眠りにつきます
今日も食べる毒林檎は
いい夢が逃げ出すほど深い眠りにつくためです

太陽も月も星も墜落して
地上は焼け焦げてゆきます
この国の空に明日はありません

冷たい柵

痛みに鈍くなるのは
限界を越えて自分を守る時
冷たくなった手のひらに
積もる雪のように
冷たい柵の隙間から伸ばした手に
無条件の愛を
優しさを
ぬくもりを
私にも
欲しかったけど掴めなかったもの

たとえうさぎじゃなくても
さみしいと死んでしまう人の心も
何処から何から私を守れば
守りきれるの
冷たい柵の隙間から伸ばした手に
無条件の愛を
優しさを
ぬくもりを
私にも私にも
欲しかったけど掴めなかったもの

冷たい柵の隙間から伸ばした手に
無条件の愛を
優しさを
ぬくもりを
私にも
欲しかったもの触れたかったもの
欲しかったけど掴めなかったもの

真実(ほんとう)の空

雲ひとつない青く青く真っ青な空
こんなふうに私の心の中には
何も浮かんではこない
その青い空の上にあるカミナリの音も
月の輝きも見えないでいるだけで
私はまだ真実(ほんとう)の空を知らない
目をあけたまま何も見ずに靴を捨てた日
戻れないところにはゆけず
戻りたくないところにばかりいくことができる
明日は晴れるの?
雨が降っても みんな生きているわ
ただ歩いてる人に感じる力強さを
私にもください
見える傷を残した私に
この傷跡に私の見えない全ての痛みまで
写しだされてしまった私に
ただ息をしている人に感じる心地良さを
私にもください

私の心

「もうアンタのところにはいられないよ」
たぶん最後にそう言い残して飛んで行った
私の心は葉っぱのような
小さな小さな羽を
ちょこんとつけて
ゆくあてもない長い旅をしている

私の心はいつ飛んで行ったのか
わからない
思い出せないほど遠い昔

どこにいるの 帰っておいで
もう大丈夫だから
安心して 帰っておいで
ごめんね 悲しい思いをずっとさせたね
やっとあなたのこと思い出せたの
最近はさみしくない
おちついてゆっくりと暮らしているの

人は時に
さみしさの隙間を
気づかずさみしいもので埋めてしまう

人は時に
かなしみの抜け道から
もっとかなしい場所へ向かってしまう

人はよわくてよわくて よわくていいんです

一番手に入らないものを
諦めきれないとき
人は人から離れた渦の中
それでもどうにか人は
一日の終わりをこうして待つのです

人は誰でも絶望のかなたに
小さな花をさがしだす
人は誰でも苦しみの果てに
じぶんの青空をみつける

消したくても消せない過去は
そっとしておいてあげましょう

それでもやりきれなさが残るのが
人というものなのでしょう

逃避

私は時々逃げ出したい
懐かしいあの空の上に

私は時々逃げ出したい
ひとり裸足で地の果てへ

私は時々逃げ出したい
抱え込んだ現在を潰す前に

私は時々逃げ出したい
感情の無い世界へ

一度でいいから行ってみたい
何もかもがあったかい世界へ

一度でいいから見てみたい
本物の愛情の世界を

そんな世界で生きてみたい